今回は感染症とワクチンについて議論する上で前提となるお話をします。
薬に副作用があることはいけないことでしょうか?答えは、場合によります。
抗がん剤は嘔吐・脱毛・皮膚粘膜障害・血球減少などの副作用がしばしば起こりますが、死に至る病気であるがんを治療するためであれば許容されます。
一方、風邪薬で抗がん剤と同じような副作用が生じたらどうでしょうか?答えは、許容されません。なぜなら、風邪薬は死に至る病気を治療する薬ではないからです。
ワクチンの場合はどうでしょう?ワクチンの目的から考えてみましょう。
1の目的の場合は無条件にOKでしょうか?そんなことはありません。
「感染症がもたらす被害とその確率」が「ワクチンによって起こる副作用とその確率」より大きい必要があります。
また、そもそもワクチンの感染症予防効果が低かったら副作用は許容されにくくなります。
2の目的の場合はどうでしょうか?本人がかかっても被害が少ない感染症を、他人に感染させないためにワクチンを受けることになります。
たしかに、「ワクチンによって起こる副作用とその確率」が非常に小さい場合は正当化されます。
そうでない場合は以下の哲学的な思考実験「臓器くじ」について考える必要があります。
The Survival Lottery - John Harris (1975)
この思考実験に対しては、「1人の犠牲で多数の命を救える」、「健康な人を殺すのはおかしい」、「臓器移植が必要な人に臓器を提供しないのは殺しているのと同じだ」といった議論がされておりますが、意見の一致が難しい問題と思われます。
実は、新型コロナウイルス感染症についても似たような状況に直面しております。
新型コロナウイルス感染症の流行を防ぐ目的で、感染してもほとんど重症化しない若年者に、有害事象報告が正しく行われない、新しいワクチンを一律に接種するということです。
ワクチン接種により新型コロナウイルス感染症で死亡する人数を減らせる一方で、本来なら感染しても平気な若年者に重篤なワクチンの副作用が生じたとしても、助かる人数が多くなるなら万歳だ!とあなたは言えますか?